2009年7月21日火曜日

hon:「理系」という生き方 理系白書2/毎日新聞科学環境部 [★★★★★]

DVC10091この本は「理系白書」の続編として2007年に 出版されました。前回のテーマは「理系は報われているか」と題して、理系の現状にスポットを当てましたが、今回は「文系、理系の壁」がテーマです。文理分けは、早期に専門性を身につけるには有力ですが、視野が狭まり、また思わぬレッテルを貼られることになり、時間が経つにつれその弊害はましていきます。この本では、その文理の壁を壊す試み、また文理に縛られず生きている人を紹介しています。

第一章は「文理分け教育」です。高校での文理分け教育は1970年前後に始まったそうです。それ以前にも文理分けはありましたが、文系理系に関わらず、幅広く学ぶことが要求されていました。
しかし、大学の大衆化にともない、入試の軽量化が始まりました。高校は進学実績を上げたいので、その軽量化により特化した教育、つまり無駄な教科を排除した明確な文理分けを行うようになります。高校受験生も、効率的な大学受験のため無駄のない学校を選びます。こうして合理化が進み、日本の文理の壁は厚くなっていきました。この現象がエスカレートした末に起きたのが2006年問題となった高校の未履修問題です。

受験における”無駄”を学ばなかった悪影響として、天動説を信じる文系と日本語の下手な理系について事例がのっています。他にも様々な例がのっていますが、安易な文理分けの危うさがかなり伝わってきます。

しかし、文理の壁は障害にはなりますが、乗り越えられないわけではありません。文系社会で生きようとする元理系人の事例も多数紹介されています。理系の文系就職は今や一般的となり、東京工業大学では学部卒の20%が金融や、商社、サービス業に就職しているそうです。また、理系出身の社長も増加し、毎日新聞の調査では主要企業の3割が理系社長とのことです。その理系社長のとして伊藤忠商事の小林社長、キリンビール荒蒔社長への取材内容が書かれています。

このほか、ポストドクター問題、科学技術教育を見直す試みなど、理系のこれからについてが書かれています。

前回の理系白書は、本職理系人についての本といった印象でしたが、今回の理系白書2は若者、学生向けの内容になっている感じがしました。これからどう選択して生きていくか、いいヒントになりました。理系白書もオススメですが、2は是非学生の人に薦めたいです。

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