2009年7月19日日曜日

hon:理系白書/毎日新聞科学環境部[★★★★★]

DVC10090

読めば日本の現在の理系事情が全て分かるといっても過言ではないと思います。今話題の事が取り上げられています。また、取材や統計情報量が多いので、かなりの力の入れようを感じます。

まず、「文系の王国」と日本を揶揄した章から始まります。日本のトップには文系出身者が圧倒的に多いからです。この状況は適材適所の結果なのかもしれませんが、国際競争が激化するとその偏った体質は損を生みます。

例えとしてこの本ではアメリカと日本の違いを挙げています。アメリカは、1957年に大統領の科学補佐官のポストを作り、今日まで頻繁に科学技術や政策を大統領に進言してきました。だからアメリカは科学技術に関する国家戦略が先進的だったのです。一方日本政府はつい最近2001年に内閣府に総合科学技術会議が設置されるまで、科学知識皆無で政策を行ってきました。最近はようやく科学的国策が増えてきましたが、日本を指揮する中央に理系が少ないという状況は国際競争の場で多くの遅れをとりました。

一方、面白い事に、中国共産党執行部は全員が理系です。文化大革命で文系大卒のエリートは糾弾されるか地方にとばされた結果らしいです。

また、日本の理系人はいろいろ可哀そうな状況にありますが、生涯賃金では特に恵まれていません。この本ではある国立大卒の理系と文系の年収比較を行っています。それによると、若い世代の平均年収では理系は勝ってますが、生涯賃金となると、文系の方が家一軒分=5000万円 理系を上回っています。理系人が出世しにくいのも大きな要因の一つとなっています。上場企業社長で、欧州はその50%ほどが理系出身者ですが、日本はその3割程度と特徴的です。国会議員に至っては、全体の2割しか理系出身者がいません。

青色発光ダイオードで一躍時の人となった中村修二氏についても書かれています。中村氏は青色LEDを開発し、勤めていた日亜化学工業それを利用して急成長、2002年には売上高1000億円にまでになりました。しかし、中村氏が受け取った報酬は2万円。国際学会でついたあだ名は「スレイブ・ナカムラ」だったそうです。相当の対価を求めて日亜を訴えた中村氏に対して、当時日本では金の亡者だ云々カンヌン寄りの調子でしたが、発明した者にそれ相応の報酬が認められるのは当たり前のことです。アメリカではそういった習慣が既に根付いていますが、日本でもこの一件から企業が発明者に支払う報奨金制度の待遇が改善しつつあります。

その他増えるポスドク問題、理系離れ、女性研究者、大学発ベンチャー、文理融合など「白書」の名にふさわしく、今の理系にまつわる話題が詳しく分析されています。

最後に、付録で「各分野の理系出身者」というのが載っているのですが、そこに「阿部寛 (タレント)」と書いてあったのが意外で面白かったです。あとBzの稲葉さんも理系出身らしいです。

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